(Version 2.2, 2018年3月29日最終更新)
本ハンドブックはShakuScore Version 2用です。(V2.2.3対応済み)
目次
はじめに
ShakuScoreのインストール方法と邦楽スコアの作り方の基本的手順について説明します。
基本
基本的で共通的な操作について説明します。
ファイル操作
ファイル操作関係のコマンドについて説明します。
五線譜の作成
MuseScoreによる五線譜データ(MusicXML)の作成方法について説明します。
パート設定
スコアのパート毎に設定する項目について説明します。
ページ設定
用紙とページの設定、横書き/縦書きの設定、小節やパートのレイアウト設定について説明します。
レイアウト編集
レイアウト編集関係のコマンドについて説明します。
ディレクティブ
ノートを対象に行う様々な操作(ディレクティブ)について説明します。
スタイル
各種表示要素のサイズや位置や表示方法の設定について説明します。
参照資料
ヒント集
本章では、スコア作りに役立つヒントについて説明します。
- MuseScoreとShakuScore間のデータ連携
- レイアウト編集のポイント
- 箏譜作成のガイドライン
- スコアのSVGファイルを編集する
- ShakuScore Version2の機能拡張内容(Version 1との比較)
問題の解決
謝辞
はじめに
ここではShakuScoreのインストール方法について説明します。また、ShakuScoreと合わせて使う五線譜のスコア編集ソフトMuseScoreのインストールとMuseScoreに設定するプラグインのインストールについても説明します。
インストール方法
ダウンロードページよりShakuScoreソフトウェアをダウンロードしてください。
Version 2.1.00より、インストール方法が変更になりました。
(これ以前のバージョンをお使いの方は最新版をダウンロード・インストールして下さい。)
ダウンロードしたフォルダを解凍して、
Windowsでは、解凍したフォルダを適当なフォルダに移してください。ただし、空白を含むフォルダ名(“Program Files”など)のフォルダの下に置かない様にしてください(MuseScoreのプラグインが動作しません)。
Macでは、ShakuScore.dmgファイルを開き、ShakuScore.appを適当なフォルダーに移動して下さい。
MuseScoreのプラグインの設定方法:
1.MuseScoreを予めインストールしておいてください。
2.ShakuScoreを起動し、ヘルプメニュよりMuseScore用プラグインを設定するを実行すると、次のダイアログが表示されます。
MuseScoreのプラグインフォルダを指定してOKを押します。
MuseScoreプラグインフォルダは規定では”~/Documents/MuseScore2/プラグイン”ですが、念のためMuseScoreの環境設定からタブ[一般]で選択されているプラグインフォルダを確認し、規定と異なる場合は、そのフォルダを指定してください。
次にMuseScoreを起動して、プラグインを有効化を行って下さい。
一度、有効化を行っておけば、ShakuScore.appの格納場所変更、またはプラグインファイルの改版がない場合はプラグインの生成と有効化は不要です。
MuseScoreからShakuScoreを開く方法
MuseScoreで開いているスコアをワンクリックでShakuScoreを起動して開くことができます。これは専用のプラグインをMuseScoreに設定すれば可能になります。
プラグインの有効化:プラグインをインストールしたら、MuseScore(起動中の場合は再起動が必要です)上でプラグインマネジャーによりプラグインの有効化を行ってください。プラグインマネジャーを起動して、exportToShakuScoreプラグインとexportUpdateToShakuScoreプラグインをチェックしてOKをクリックするとプラグインが有効化され使用可能になります。
プラグインの実行:
MuseScore上でプラグインメニューから“Export To ShakuScore”プラグインを実行するとShakuScoreが起動し、MuseScore上で開いているスコアがShakuScoreにインポートされます。
すでにShakuScoreが起動中の場合であっても別のShakuScoreが起動します。
スコア作成の基本手順
スコアの作成の基本的な流れを説明します。
五線譜作成編集にMuseScoreを使い、作成したスコアのデータをShakuScoreで邦楽譜に変換し編集します。
- MuseScore上で五線譜のスコアを作成します。
- 作成したスコアをMusicXMLファイルにエクポートします。
- エクポートしたMusicXMLファイルをShakuScoreでインポートします。
- ShakuScoreでページ設定、パート設定、レイアウト編集等を行い邦楽スコアを完成させます。
- 完成したスコアをPDF形式で出力します。
- 完成したスコアをShakuScore形式のファイル(*.sscx)に保存します。
ShakuScoreとMuseScoreはどちらもMusicXMLファイルをエクスポートできますので、MusicXMLファイルを経由してデータをやりとりできます。
また、ファイルを経由せず直接ShakuScoreからMuseScoreに(エクスポートMusicXML To MuseScoreコマンド)、MuseScoreからShakuScoreにデータを渡す機能(“Export to ShakuScore”プラグインまたは”Export Update to ShakuScore”プラグイン) があります。
基本
ショートカットキー
WindowsとMACでは、同じコマンドに対するショートカットキーが一部異なります。WindowsでのCtrlキーはMACでは⌘となります。例えば、操作の取り消しコマンドは、
WindowsではCtrl+Z
MACでは⌘+Z
となります。
本ハンドブックではWindowsの場合のみショートカットキーを示しますので、MACユーザの方はCtrlを⌘に置き換えてください。
表示
表示メニューより拡大、縮小、ズームをリセットが行えます。キー操作では、
Ctrl++で拡大表示します。
Ctrl+-で縮小表示します。
マウスホイール回転で上下にスクロールします。
Shift+マウスホイール回転で左右にスクロールします。
Ctrl+0で拡大・縮小倍率と表示位置を既定値にリセットします。
Ctrl+マウスホイール回転 でも拡大・縮小表示が行えます。
拡大・縮小は一度の操作で一定比率、拡大または縮小します。
ナビーゲーターは、スコアウィンドウの下側(または右側)に表示されます。
ナビゲーター(Ctrl+F10)でナビゲーターの表示・非表示を切り替えます。
ナビゲーター内の青い矩形領域をマウスでドラッグ(掴んで移動)すると、表示領域が移動します。
ナビゲーター画面内をクリックするとその位置が表示の中心位置になります。
スコアウィンドウの楽譜をドラッグにより移動することも可能です。ただし小節の上をクリックすると小節が選択されて、楽譜を掴んで移動することはできませんので、小節以外のなにもない場所を指してして掴んでください。
ナビゲーターとパレット
パレットは、スコアウィンドウの左側に開き、ディレクティブコマンド名がツリー状に表示されます。▶印をクリックすると展開または折りたたみできます。
パレット(Ctrl+F9)でパレットの表示・非表示を切り替えます。
処理の取り消しと再実行
すべての編集操作は元に戻すと再実行が可能です。
編集メニューより元に戻すまたは再実行を実行するか、
キーボードから、
Ctrl+Zで元に戻します。
Ctrl+Yで再実行します。
要素の選択
マウスの左クリックで要素を選択します。選択できる要素は、選択後に移動、削除、右クリックでメニュー表示などができる可能性があります。
複数要素を選択することも可能で、Ctrlを押しながら、要素を続けて左クリックします。選択した要素に対するコマンド操作は、コマンドが複数要素に対応していれば選択要素の全てに、そうでなければ最初の要素に対してのみ実行されます。
言語
ユーザインタフェースの言語は日本語か英語を選択できます。
Languageメニュより、
日本語を選択すれば日本語に、
Englishを選択すれば英語になります。
ダイアログボタン共通
パート設定ダイアログ、ページ設定ダイアログ、スタイル設定などダイアログの最下段に次のダイアログがあり、動作は共通です。
既定値に戻す:ダイアログの設定値をシステムの規定値に戻します。
適用:ダイアログの設定値を適用します。(設定値に変化がなければ適用はされません。)
OK:設定値が変更されていれば適用して、ダイアログを閉じます。
キャンセル:ダイアログを閉じます。既に適用されたものがキャンセルされるわけではありません。Escを押してダイアログを閉じることもできます。
ヘルプ
ヘルプメニューより
オンラインハンドブックでオンラインのハンドブック(これ)を表示します。
ShakuScoreについては、使用しているShakuScoreの版数情報などが表示されます。
版数が最新でない場合は、最新の版数情報が表示されますので、最新版をダウンロード・インストールされることをお勧めします。
また、ShakuScoreの起動時にも、版数が最新でない場合に最新版の存在を知らせるメッセージが出力されることがあります。このメッセージは、同じ日には一度だけしか表示されません。
ファイル操作
ファイルの種類とファイル操作コマンドについて説明します。
ファイルフォーマット
ShakuScoreでは次の5種類のファイル形式を扱います。
- MusicXML形式(*.xml)
ShakuScoreのインポート対象のファイル形式です。MusicXMLは五線譜スコアデータの標準形式の一つであり、多くの楽譜編集ソフトウェアがサポートしています。 - ShakuScore形式(*.sscx)
ShakuScore独自のファイル保存形式です。(MusicXMLデータにShakuScoreの固有データを加えた形式です。) - PDF形式(*.pdf)
作成したスコアはPDF形式のファイルにエクスポートできます。PDF形式は印刷、表示、配布用に最も一般的に用いられています。 - SVG形式(*.svg)
作成したスコアをSVG形式のファイルにもエクスポートできます。 - ShakuScoreスタイルファイル(*.sssx)
ShakuScoreのスタイルファイルの保存形式です。
開く
ファイルメニューより、
開く(Ctrl+O)でShakuScore形式のファイルを指定して開きます。ファイルをスコアウィンドウにドラッグ&ドロップすることでも開けます。
最近開いたファイルにより、最近開いたファイルのリストが表示されるので、リストの中からファイルをクリックして開きます。
サンプルファイルは、サンプルファイルのリストを表示しますので、リストの中からファイルをクリックして開きます。サンプルファイルは上書きできませんので、保存したい場合はファイル|名前を付けて保存してください。
インポート
インポートMusicXML(Ctrl+I)でmusicXML形式(*.xml)のファイルをインポートします。musicXMLファイルをスコアウィンドウにドラッグ&ドロップすることでもインポートできます。
インポート更新MusicXML(Ctrl+I)は、最も最近保存した(開いた)ファイルに対して、インポートするMusicXMLファイルのデータで異なる部分(小節単位およびタイトル類のテキスト)のみを置き換えます。注意:このコマンドは2つのスコアのパート数と小節数は同じ場合のみ実行可能です。
インポート時の環境|現在のパート/ページ/スタイル値を設定を実行すると、その時点でのパート設定値、ページ設定値、スタイル設定値が記録され、以降のインポートではこの設定値が適用されてスコアが生成されます。
エクスポートMusicXML関連のコマンドを実行した場合は、このコマンドも実行されます。
インポート時の環境|システムの規定値にリセットを実行することにより、その時点でのパート設定値、ページ設定値、スタイル設定値をシステムの規定値(初期設定値)にリセットします。
保存
保存(Ctrl+S)では、現在開いているスコアにファイルに上書きします。
名前を付けて保存(Shift+Ctrl+S)では、名前を指定して別ファイルに保存します。
コピーを作成(Ctrl+D)では、スコアのコピーを作成します。
エクスポート
エクスポート|PDF(Shift+Ctrl+P)では、名前を指定してPDFファイルをエクスポートします。
複数ページの出力形式も参照してください。
(印刷コマンドは用意していませんので、PDFビューワソフトなどで印刷してください。)
エクスポート|SVGでは、名前を指定してSVGファイルをエクスポートします。
複数ページの出力形式も参照してください。ページ数だけの個数のSVGファイルに出力されます。ファイル名は、”filename_p001.svg”, “filename_p002.svg”, …となります。
エクスポート|MusicXMLでは、名前を指定してMusicXMLファイルにエクスポートします。
(出力されるデータはMusicXMLデータにShakuScoreのディレクティブデータを加えたものです。ディレクティブデータはMuseScore上ではノートのフィンガリングのテキスト情報として表示されます。ShakuScoreにエクスポートした時に復元されるデータなのでMuseScore上では編集や削除しないでください。)
エクスポート|MusicXML To MuseScoreは、MuseScoreを起動し、スコアのMusicXMLデータをMuseScoreに渡します。MuseScoreが起動中の場合は、一旦閉じてから、このコマンドを実行してください。(エクスポート|MusicXML同様にディレクティブ付きのデータを出力します。)
エクスポート|pure MusicXMLは、ディレクティブデータを付加しない純粋なMusicXMLデータを出力します。MuseScoreでスコアをきれいに印刷したい場合等に使用できます。
その他のファイル関係コマンド
ファイルのプロパティでは、ファイルパス名、最終保存時のShakuScoreの版数と日時を表示します。
最近開いたファイルのリストをクリアするでは、最近開いたファイルのリストをクリアします。
閉じる(Ctrl+W)では、現在開いているスコアを閉じます。
終了(Ctrl+Q)では、ShakuScoreを終了します。現在開いている全てのスコアが閉じられます。
五線譜の作成
ShakuScoreは、五線譜データ(MusicXML形式)を読み込んで邦楽スコアに変換します。
五線譜の作成・編集にはMuseScoreを使うことお勧めします。
MuseScoreとMusicXML
MuseScoreは他の主要なスコア編集ソフトと同様に、楽譜の世界標準ファイルフォーマットであるMusicXML形式のファイルを出力することができます。
ShakuScoreでは、このMusicXML形式のスコアファイルを読み込むことができますので、広く流通するスコアファイルやスコア編集ソフトを利用できます。
ShakuScoreでは邦楽スコアに必要最小限の範囲に絞って、MusicXMLデータを解釈し邦楽譜への変換を行います。変換されない要素もありますのでご注意下さい。
五線譜のスコアの作成にはMuseScoreを使うことを強くお勧めします。その理由は、
- ShakuScoreはMuseScoreの出力するMusicXMLデータを対象に開発とテストを行ったため、相性が良いと考えられます。
- MuseScoreから直接ShakuScoreを呼び出す機能(プラグイン機能)や、ShakuScoreからMueseScoreを呼び出す機能(エクスポート To MuseScoreコマンド)など、MuseScoreとShakuScoreをセットで使うための便利な機能が用意されていること。
- MuseScoreは高機能であり、フリーで使え、使い勝手も良いこと
です。
サポート対象のMusicXML要素
以下にサポートしている要素を羅列します。
装飾音符、拍子記号、縦線(小節線)、スラー、タイ、<(クレッシェンド)、>(ディミヌエンド)、
括弧付き数字(繰り返し記号)、トリル、グリッサンド、ブレス、
アーティキュレーション(フェルマータ、ブレス、アクセント、スタッカート、テヌート、トリル)、
強弱記号(ppp, pp, p, mp, mf, f, ff, fff, fp)、トレモロ(シングル、ダブル)、アルペジオ
反復記号(セーニョ、コーダ、Fine、To Coda、D.C.、D.C.al Fine、D.C. al Coda、D.S. al Fine、D.S.)
テキスト(タイトル、サブタイトル、作曲者、作詞者、コピーライト)
譜表テキスト、リハーサルマーク、歌詞
ShakuScoreがサポートするMusicXML要素(MuseScore画面) (クリックするとPDFファイルを開きます)
尺八譜に変換した例(横書きの場合)(クリックするとPDFファイルを開きます)
和音
和音は、縦書きでは最低音を左側に、横書きでは下側に配置します。
尺八など単旋律の楽器では、和音は本来ありませんが、五線譜データのとおりに和音を表示します。その場合、甲乙表示は、和音の最低音を旋律の音とみなして付与します。和音の第2音以降については甲乙を付けません。
ボイス(声部)
ボイス(声部)が複数ある場合は、縦書きではボイス番号の若い順に右から左へ並べます。横書きでは下から上へ並べます。
春の海の和音と和声の部分(MuseScore) (クリックするとPDFファイルを開きます)
パート設定
編集|パートの設定またはCtrl+Pでパート設定ダイアログを開き、パート毎の各種設定を行います。
パート設定ダイアログ
まず、左側のパートリストから設定を行うパートをクリックして選択します。
パート名、パート短縮名は、初期値はMusicXMLのデータになりますが、ここで編集できます。パート名とパート短縮名はスコアの各パートの先頭に表示されます。それらの表示・非表示の制御はページ設定ダイアログから行います。
記譜スタイル、フォント・フォントサイズ、楽器のキー
記譜スタイルでは、パートの記譜スタイルを選択します。全ての記譜スタイルで横書きと縦書きの両方が選択可能です。
記譜スタイルには、以下があります。
尺八_琴古_簡易:山川形式と呼ばれるもの。
尺八_琴古:琴古流とくに古曲に使われている形式。
尺八_都山:都山流形式。
篠笛:篠笛用。数字譜(山川譜)と乙音に漢字を併用する方式の2種類のフォントを用意している。
箏_生田:生田流の箏譜の形式。
それぞれの形式のスコアをサンプルファイルとして用意していますので、ファイルメニューからサンプルファイルを開いてみて下さい。
フォント名では、それぞれの楽譜のスタイルに用意されたフォントファイルから一つを選択します。
フォントサイズ(比率)では、パートのフォントの大きさを比率で指定します。パートの音符やテキスト、ダイナミクスなどの記号などが全て連動して大きさが変わります。
パート幅(比率)では、パートの幅を比率で指定します。ページ設定のパート幅は全てのパートに適用されますが、この設定ではパート毎に幅を変えることが可能です。
楽器のキーの指定(移調)
楽器のキーで移調ができます。移調する幅は1尺8寸D管(篠笛では8本C管)を基準にして半音刻みで指定します。
パート境界線と長短針
右(または上)をチェックするとパートの右側(縦書きの場合)、または上側(横書きの場合)のパート間境界線を描きます。
左(または下)をチェックするとパートの下側(縦書きの場合)、または左側(横書きの場合)のパート間境界線を描きます。
長短針をチェックすると4分音符単位(6/8拍子等では3/8単位)の時刻に長針を8分音符単位の時刻に短針を表示します。これは箏生田の記譜用です。ただし、長短針の表示には、ノートの時間で整列(ページダイアログ内にあります)がチェックされていることが必要になります。
出力制御
ノート(音符)を出力するかどうかのスイッチです。(現在使えません)
歌詞を出力するかどうかのスイッチです。
休符出力抑止をチェックすると、全休符を出力しません。
歌詞の設定
歌詞のフォントとサイズを指定します。フォントのプロパティでフォントの種類とサイズを指定します。フォントのサイズは、フォントサイズ(比率)または、フォントのプロパティからも指定可能です。
規定値に戻すでシステムのデフォルト値がダイアログに表示されます。
適用で設定値をスコアに適用します。
OKで設定値をスコアに適用し、ダイアログを閉じます。
キャンセルで、ダイアログを閉じます。(既に適用した設定は戻りません。戻したい場合は、編集|元に戻すを実行してください。)
ページ設定
ページ設定では、ページ設定ダイアログを使って、ページの構成、スコアの方向、ページと段と小節の配置などに関して、多くの設定を行います。
レイアウト|ページ設定またはCtrl+Lからページ設定ダイアログを開きます。
ページ設定ダイアログ
ページ内の設定情報
ページ設定ダイアログではスコアのレイアウトに関して用紙、ページ、スコアの方向、パート・段・小節のサイズ等、多くの設定を行います。
用紙サイズ、向き、ページマージン
用紙のサイズ(A3/A4/B4/B5/JIS B4/JIS B5/カスタム/A3横 (A4縦 x 2)/B4横 (B5縦 x 2)/JIS B4横 (JIS B5縦 x 2)と向きを設定します。
カスタムを選択した場合は、カスタムサイズを指定します。A3横 (A4縦 x 2)等は見開き2頁構成です。
ページマージンは、スコアの描画エリアの外側のページマージンを設定します。
ヘッダー領域
ヘッダー領域は、曲のタイトル、作曲者名、などのテキストが描かれる矩形の領域であり、最初のページの上部にあります。
ヘッダー領域の幅では、ヘッダー領域の幅(横書きでは高さ、縦書きでは幅)をmm単位で指定します。下パッドは、段の領域との間隔をmm単位で、ヘッダー領域の外形を描画をチェックすると外形線の太さで線を描画します。
小節番号とパード名表示
小節番号、パート名、パート短縮名の表示/非表示を切り替えます。
小節番号表示をチェックすると格段の右上に段の先頭の小節番号を表示します。
パート名表示をチェックすると、パート短縮名がチェックされていれば短縮名をチェックされていなければパート名を表示します。
パート名をチェックすると、スコアの初段の小節の前にパート名を表示します。
パート短縮名をチェックすると、各段の先頭の小節の前にパート短縮名を表示します。パート名がチェックされていれば初段にはパート名が表示されます。
初段のみ表示をチェックすると、スコアの初段の小節の前のみにパート名またはパート短縮名を表示します。
ページ番号
ページ番号表示をするかどうかの指定とページ番号の開始番号を指定します。
複数ページを連結する(複数ページの出力形式)
複数ページの出力形式で個別を選択してある場合、PDFおよびSVGファイルにエクスポートした時、複数ページが別々のページ(PDFの場合)またはファイル(SVGの場合)に出力され、連結を選択されている場合は、複数ページを連結して単一のページまたはファイルに出力されます。(PDFに変換した楽譜をタブレットなどでスクロール表示する場合には、複数のページを連結して一枚のページにしたほうが便利なことがあります。)
横書き、縦書きの設定
五線譜のように左から右へ音符を並べる横書きと、上から下へ音符を並べる縦書きのいずれかを選択します。縦書きの場合、テキストは縦に回転して表示されます。歌詞は歌詞を回転がチェックされている場合のみ、縦書き時、時計方向へ90度回転されます。
テキストや歌詞の文字列の先頭に”.”(ピリオド)を入れておくと、縦書きの場合に、文字列を回転せずに、縦書きにします。日本語など縦書きの言語に有効です。横書き時には”.”は無視されます。
パート間整列
ノートの時刻で整列をチェックすると、パート間で同じ時刻のノート同士を位置を揃えて表示します。
長針・短針を表示するには、ノートの時刻で整列がチェックされていることが必要です。長針・短針は箏_生田の形式の体裁を表示するのに必要ですので、箏_生田の場合にはいつもチェックしてください。
ノートの時刻で整列は、箏_生田のほかには、スコアが複数パートからなり、パート間の時間関係をはっきりさせたいときに指定すると良いでしょう。
パートと段のサイズと制御
パートの高さ(または幅)では、パートの高さ(横書きの場合)または幅(縦書きの場合)をノートのフォントサイズに対する比率で設定します。段と段の間の距離はmm単位で指定します。最終ページの段をページ高さ(または幅)に合わせるをチェックすると、最終ページの段の間隔を広げてページ一杯に分散させます。
小節の矩形を描画するをチェックすると段と段との間隔は0となり、小節を矩形で囲った表示になります。
段あたりの小節数
一定数/ページ幅(または高さ)をオンにすると、1段当たりの小節数を一定数に、また自動オンにすると自動的に決まります。
自動の場合は小節のスケール(比率)により、全ての小節の幅の伸縮比率を指定できます。
最終段をページ幅(または高さ)に合わせるをチェックすると、最終行をページ幅(横書きの場合)または高さ(縦書きの場合)一杯に広げます。
レイアウト編集
ページ設定により基本的なレイアウト設定が行えますが、さらに小節の伸張または短縮や改行や改頁を挿入することによって細かいレイアウトの調整が行えます。
そのほかテキスト類の移動、ヘッダー内テキストのフォントの変更、音符名の変更などができます。
小節の伸張、短縮
選択した小節に対してレイアウト|小節の伸張または]で、小節を伸張します。
同様に、レイアウト|小節の短縮または[で、小節を短縮します。
1回の操作で数パーセントずつ伸張または短縮します。
(全ての小節を一律に伸張、短縮したい場合は、ページダイアログの小節のスケール(比率)で指定するのが便利です。)
小節を選択するには、小節の上をクリックします。複数小節を選択するには、小節を一つ選択した後、別の小節をCtrlキーを押しながらクリックすると、2つの小節間の小節がすべて選択されます。
改行、改ページ、空白頁
強制的に改行や改ページを行わせることができます。また空白頁の挿入が行えます。
改行を挿入するには小節を選択し、レイアウト|改行を挿入またはCtrl+Enterを実行します。
改頁を挿入するには小節を選択し、レイアウト|改頁を挿入または
Shift+Ctrl+Enter を実行します。
空白頁を挿入するには、小節を選択し、レイアウト|空白頁を挿入を実行します。
改行マークとして水色の四角形、改頁マークとして赤色の四角形が表示されます。空白頁のマークとしては灰色の四角形が表示されます。改行・改頁・空白頁を削除するには、改行マーク、改頁マーク、空白頁マークの四角形を選択(色が黄色に変化)してから、レイアウト|改行・改ページ・空白頁を削除またはDeleteを実行してください。
記号、テキストの移動
テキストの多くは移動できます。マウスでドラッグ&ドロップしてください。
移動可能なもの:尺八譜の甲乙、テキスト類、歌詞、強弱記号(p, pp, f, ff, mp, mfなど)、スラー、クレシェンド、ディミュニエンド、アーティキュレーション(スタッカート、アクセント、フェルマータなど)が移動ができます。タイは移動できません。
スラー、クレシェンド、ディミュニエンドは、複数の段に分割されている場合は移動できません。移動したい場合は、レイアウトを変更して分割されない状態にすれば移動できます。
フォントの変更
ヘッダー領域に表示されるタイトル、サブタイトルなどのテキストはフォント変更ができます。テキストを選択してから、右クリックして表示されるフォントのプロパティをクリックして表示されるフォントダイアログで変更します。(歌詞のフォント変更については歌詞の設定を参照してください。)
ディレクティブ
ディレクティブの説明
ノートの対して様々な指示を行えます。この指示をディレクティブと呼びます。
ディレクティブは、ノート名の指定、シンボル挿入、シンボル付加、音階、コントロールに分類されます。それぞれについて以下に説明します。
ディレクティブの追加と削除
ノート名の指定を除き、
ノートにディレクティブを追加するには、ノートを選択(複数選択可)してから、パレットのディレクティブの一つをダブルクリックします。
ノートのディレクティブを削除するには、ディレクティブ選択(複数選択可)してから、削除(Delete)します。
ノート名の指定
ノート名を規定の名前とは異なる名前を指定するには、音符を選択してから右クリックして別の音符名を指定するを選択すると音符名を変更のダイアログが表示されますので、リストから変更後の音符名を選択しOKをクリックします。
ノートの横に赤い色で”n”のマークが表示されます。これがノートにノート名指定のディレクティブが付加されたことを示すマークとなります。この”n”のマークを選択して削除(キーアサイン)すれば、指定を解除します。
シンボル挿入
シンボル挿入に分類されるディレクティブは、ノートの前または後ろにシンボルが挿入されます。
シンボル付加
シンボル付加に分類されるディレクティブは、ノートの脇にシンボルが付加されます。
音階
箏などの記譜法ではノートに音階(スケール、調弦)を指定する必要があります。
ノートを選択して音階の一つを設定することができます。ノートの横に、音階のディレクティブが付加されたことを示す赤い音階ディレクティブのマークが表示されます。赤いマークを削除すると指定が解除されます。
和音を構成するノートに音階を指定する場合は最低音を指定してください。
また複数ボイスが存在する場合は、一番低い番号(ShakuScoreでは縦書きでは一番右側、横書きでは一番下側のボイス)に対して指定してください。
記譜法に箏を選択した場合は、平調子が規定の音階として使用されます。
音階をあるノートに指定すると、音階が指定されている次のノートまで、同じ音階が使用されます。
音階の編集
音階のディレクティブを選択し、右クリックして、コンテクストメニューの音階の編集をクリックすると音階編集ダイアログが表示されます。
音階編集ダイアログと音階のテンプレートダイアログ
音階を編集は、次の操作を組み合わせることで行います。
-
テンプレートから音階を選択する。
これをクリックすると音階をテンプレートから選ぶダイアログが表示されますので、音階のノート数を指定して、表示される音階の候補のどれかを選択し、OKをクリックすると、音階の編集ダイアログが設定されます。 - 先行する音階をコピーする。
これをクリックすると一つ手前のノートの音階がコピーされて、音階の編集ダイアログが設定されます。 - 各ノート番号毎にピッチを上げ下げする。
ノート番号のリストのどれかを選択して、右側の上へ、下へのボタンで半音ずつピッチを上下に変更します。
ピッチの表記は、中央のドをC4とし、数字はオクターブ番号を表します。 - 全体を移調する。
移調幅を半音数で指定してから、移調するをクリックすれば全てのノート番号を移調します。もう一度クリックすると更に同じ半音数だけ移調します。
音階名は、編集してわかりやすいものにしておくと良いでしょう。音階名によって内部の動作が影響を受けることはありません。
コントロール
その他のさまざまな制御を行うディレクティブです。
ノートの繰り返し記号を禁止するディレクティブなどがあります。
琴古と箏生田の記法では、同じノート名が連続する場合は、2個め以降は規定では繰り返しマーク(丶)を使用しすが、このディレクティブをノートに付加すると繰り返しマークを使用しません。
シンボル以外のディレクティブは赤色など色付きで表示され、PDFやSVGファイルへエクスポートするときは描画されません。
スタイル
小節やノートに関連する要素のサイズや間隔などを微調整できます。
スタイルメニューより、
全般を選択するとスタイル設定ダイアログが開きます。小節タブとノートタブがあり、
小節タブでは小節に関連したスタイル設定を、
ノートタブではノートに関連したスタイル設定を行います。
スタイルダイアログの小節タブ
小節タブでは、
小節グループ:
段の線幅、拍子記号サイズ、先頭パッド(小節内の最初の音符の前の空きスペース)、末尾パッド(小節内の最後の音符の後ろの空きスペース)をmm単位で指定します。
小節線と繰り返しドットグループ:
拍子記号と小節線を表示のチェックをはずすと拍子記号と小節線を表示しません。
その他、小節線の細線幅、太線幅、二重線の間隔、リピートドットのオフセット(小節線からの距離)、リピートドットのサイズ、リピートドットの間隔の調整が行えます。
時刻目盛りグループ:
長針と短針の線長(パート幅の%)、線幅(mm)を指定できます。
ただし、記譜法が箏生田の場合には、長針は100%、短針は50%に固定されています。
テキスト・フォントのプロパティ
テキスト類(タイトル類以外)のフォントプロパティを設定します。
(ヘッダー領域のタイトル類は、個々に変更できます。)
スタイルダイアログのノートタブ
ノートタブでできるスタイル設定を以下に説明します。
ノートの音価に対するノートの幅と間隔グループ:
ノート幅は横書きなら幅、縦書きなら高さです。パート設定で指定したフォントサイズを1として、比率で指定します。音価(音の長さ)毎にノート幅を変えることができます。
ノート間隔はノートから次のノードまでの間隔の初期値であり、ノート幅に対する比率で指定します。
歌詞の位置:オフセットはノートの基準位置からの距離です。
タイ終了ノートのスタイル(簡易琴古、篠笛用):棒線を使用にチェックを入れるとタイの終了ノートを棒線で表示します。この場合タイの記号は表示しません。
オクターブ指示(甲/乙):倍率でスケールファクターを指定します。
装飾音符:装飾音符のサイズの縮小率で通常ノートのサイズに対する比率で指定します。都山は縮小されません。Yオフセットは横書きの場合のY方向のオフセット、Xオフセットは縦書きの場合のオフセットです。
スラー、タイ、アーティキュレーションの各オフセット。
桁:X,Yオフセットで桁の位置を調整します。線幅、線の間隔の調整もできます。
ノート・スペーサー:桁の切れ目のクリアランス(間隔)を拡げるための細い見えない要素です。ビームの切れ目の間隔を調節できます。
ノート・スペーサー:スペーサーを挿入にチェックを入れると、桁線の切れ目にスペーサーを入れて前後のノート上の桁線端と端が離れるようにします。
スタイルのインポートとエクスポート
スタイルメニューより、標準スタイルのインポート、スタイルのエクスポート、インポートが行えます。これによるスタイルの再利用などが可能になります。
標準スタイルをインポートでは、予め用意されたスタイルをインポートし、スコアにそのスタイルを適用します。
スタイルをインポートでは、スタイルファイルを指定してスコアにそのスタイルを適用します。
スタイルをエクスポートで、スコアのスタイルを名前を付けてファイルに保存します。
参照資料
音符名一覧表
ディレクティブ一覧表
ヒント集
スコア作成に役立つヒントなどを説明します。
MuseScoreでのスコア編集作業とShakuScore間でのレイアウト編集作業を並行して進める方法
一度ShakuScoreにインポートしてレイアウト編集したスコアをMuseScoreに戻って編集したい場合は、次の方法をお勧めします。
(1)ShakuScore上でエクスポートMusicXML To MuseScoreを実行します。
(2)MuseScoreが起動してスコアが開くので、編集して、Export Update To ShakuScoreプラグインを実行します。
そうするとMuseScoreで変更した小節(およびタイトル類)のみが置き換わります。(1),(2)を繰り返すことで効率良く編集作業が行なえます。
ただし、小節数やパート数をMuseScoreで変更した場合はExport Update To ShakuScoreプラグインは使えませんので、Export To ShakuScoreプラグインを使用してください。この場合は、レイアウト編集結果(テキスト類の移動後の座標、小節の伸張、改行等のデータは復元されませんので、やり直しになります。(パート、ページ、スタイル設定は、ShakukScoreからのエクスポート時にはインポート時の環境設定(パート、ページ、スタイル設定)が自動的に実行されるので、復元されます。)
レイアウト編集のポイント
(準備中です)
箏譜作成のガイドライン
箏譜は和音や複数声部(左手と右手の別旋律)があること、調弦情報が必要になることかた、尺八譜などの単旋律の楽譜にくらべて、入力が複雑になります。
右手と左手の旋律は声部(ボイス)を分けて下さい。右手旋律をボイス1に割り当てて、左手旋律をボイス2(3,4も可)に割り当てて下さい。縦書きでは右手が右側に、左手が左側に表示されます。
単旋律を右手、左手で分けて演奏する場合は、ボイスに分けずにノートに左右の区別がわかるテキストを付加するのが良いでしょう。また、右手と左手を別パートに分けるという方法も可能です。
十七絃などではへ音記号を使いますが、ト音記号とへ音記号の2段の譜の場合、MuseScoreではト音記号の段とへ音記号の段は別ボイスになりへ音記号の段のほうがボイス番号が後番(5~8)になるので、ShakuScoreでは縦書きの場合、へ音記号の段が左側に表示されます。
音階(調弦)については、ボイス1の最低音(和音)のノートに音階のディレクティブを指定して下さい。
楽譜のSVGファイルを編集する
スコアをSVGファイルにエクスポートすると、SVG形式のファイルが扱える図形編集ソフト(InkScape, Illustratorなど)により、後処理として、さらに図形編集を行うことが可能になります。
問題の解決
Version1のプラグインが残っている(Version1のユーザー向け)
Version1でプラグインを使用していた場合は、ImportToShakuScore.qmlとImportUpdateToShakuScore.qmlが登録されたまま残っている可能性があります。(残ったままでも支障はありませんが)使用できませんので削除してください。)
謝辞
MuseScoreで五線譜上にロツレチ譜を書き込むShakuhachi and Shinobueプラグインを数年来愛用しています。これを提供された立花宏さんに感謝します。
これだけでもとても実用的ですが、本格的な尺八譜を作れないものかとずっと考えていました。しかし技術的なハードルが高そうで、あきらめかけていたところ、RazvanさんがmusicXMLデータから都山譜を表示するShakuViewerを公開(2014年春頃)されて、これに大いに刺激を受けました(MuseScore2用のプラグインはShakuViewerのものをそっくりまねさせていただきました)。
ShakuViewerを使ってみて作り方のイメージが一気に湧いてきたので、自分で作ってみようと思い、設計と開発を開始して、2015年3月にVersion1.0を公開しました。その後時間がなく、大幅な拡張ができませんでしたが、2015年末から2016年3月に機能拡張を行いVersion1.1として公開しました。さらに2017年の冬に箏譜のサポート、ディレクティブ機能の追加など大幅な機能拡張を行い、Version2.0を2018年1月に公開することができました。
立花さんのShakuhachi and Shinobueプラグイン、RazvanさんのShakuViewerがなかったら、ShakuScoreの開発はなかったと思います。あらためて、お二人にこの場をお借りして深謝いたします。
佐藤貴采
(2016年5月1日記、 2018年1月17日更新)